母乳育児

 泣いたら飲ませる。この極めて当たり前だと思っていた行動がこんなにも大変だとは思いませんでした。
 泣く、吸わせる、でも乳首がないからうまく吸えずに大泣き。両足で私のお腹をぽんぽんけりながらふんぞり返って泣きます。「こんな乳首で飲めるか!!!」って怒っているようでした。
 おっぱいもあんまり出ていないようです。母親が「牛も最初はあんまり出なくて一週間くらいしてから出てくるから、大丈夫」と言いました。牛?確かに私も哺乳類です。何となく救われたような気がしました。
 それでも乳首の方はどうにもできません。看護士さんが乳頭保護器を持ってきてくれてそれを使って飲ませることになりました。そうしたら何となく吸ってくれているようで安心しましたが、吸いながらすぐ寝てしまいます。寝たと思ってベットに寝かせると泣き出してまた吸わせる。この繰り返しでした。乳頭保護器は使うたびに熱湯消毒して乾かさなくてはいけません。つけて吸わせて外して消毒しているうちにまた泣き出す。休む暇などありませんでした。
 起きて泣いていないときも口をおっぱいを飲むように動かしていました。その姿が挑戦的なような感じがするほど追い詰められていました。それに追い討ちをかけるように赤ちゃんの体重が減り続けていると指導されました。そろそろ増えてもいい頃なのにと。黄疸の数値も気になります。とまで言われへこんでしまいました。
 5日目に黄疸の数値が基準より0.1か2低くなり、治療を受けることになりました。その間私は母乳を手絞りで哺乳瓶に搾り、赤ちゃんに持っていかなければなりませんでした。30分以上かけて一生懸命絞っても60cc出るか出ないかでした。こんなにちょっとしか出ていないことに驚きました。それでもこんなできの悪い母親ができる唯一のことと思い、3時間置きに絞り、持って行きました。
 幸い一日で数値は戻りました。しかし体重は減る一方でした。退院する日は生まれたときより300gも減り、一週間後にまた体重を計りに来てくださいと言われました。また、3時間おきに60ccの粉ミルクも与えるようにと指導されてしまいました。