まゆのお産Ⅱ

 足湯を始めると腰の辺りに鈍痛が来ました。以前にも感じたことのある痛さです。これが陣痛なのかどうか分かりません。でも確かに足湯をする度、鈍痛を感じます。主人は翌日また帰る予定なので「今晩生まれないかな」と期待していました。私はまだ先のようで覚悟できていませんでした。
 その晩、一時間おきくらいに腰が痛くなり、寝ていても痛みに起こされます。仰向けで寝ていられません。ベッドの上で四つんばいで腰を回し、トイレに行きました。病室からトイレまで10メートルくらいあり、歩いている間は腰の痛みが和らいでいくようでした。薄暗い廊下をゆっくりと何度も往復しました。まだ破水しています。やたら喉が渇きます。一晩で1.5リットル入りの水を4本飲み干しました。ここを乗り切ればもうすぐ赤ちゃんに会えると思い頑張りました。
 ところが明け方になると痛みがなくなり楽になりました。知らない間にぐっすり寝ていました。
 その朝の検査で「陣痛が遠のいた」と言われました。お医者さんからは「本来なら破水して24時間以内に生まれなかったら胎児の危険を考えて促進剤を打つんだけど」と脅されました。昨晩の努力が泡と消えるようだったので「数十分感覚で痛みが来ています」と答えていました。痛みがあるといえば何となくある程度だったのですが。
 それから意を決して1時間置きに足湯をしました。すると午後くらいから30分おきぐらいの痛みが来ました。その痛みは一気に強烈になっていました。傷みの最中の赤ちゃんの心拍の検査と内診は今でも思い出すと吐き気がします。7から8回くらいやりました。ナースセンターから呼ばれるたびに逃げ出したくなりました。そんな時、湯たんぽを用意してくれて腰と股に当てると楽になると教えてくれた看護婦さんがいました。本当に楽になりました。
 日が暮れたころには痛みは数分起きになりました。それでも子宮口は3センチしか開かず、その状態が何時間も続きました。7時くらいに寒気がして熱が38度になり、点滴を打ちました。物凄い嵐が吹き荒れ、大雨が降っている中にさらされている感じでした。母に腰をさすってもらい「痛い、痛い」とうなっていました。痛みが腰から尻のほうに下がっていく感じになると痛みの間隔が縮まりました。子宮口が8センチに開いていました。