2004年11月26日の朝

 生まれる直前まで私の陣痛に付き合い、腰をさすってくれた母はその夜病院に泊まりました。朝、起きるなり「おばあちゃん、今日病院だから迎えに帰って、また来るから」と言って帰ったすぐ後、父がビデオカメラを持って来ました。病室に入ってくるなり「孫は?」と言いました。「新生児室にいる」と言うとがっかりして出て行きました。それからすぐ祖母が入ってきました。えらく早いな?と思ったらどうやら一人でバスで来たらしい。朝8時前のバスに乗って。「お母ちゃんがおばあちゃん迎えに帰ったんだけど、心配するよ」と言うと「お母ちゃんと歩くとあっち寄ったり、こっち寄ったりとってもめんどくさいからバスで来た」と言って、私のベッドの横の床に座り込みました。
 84歳になった祖母はここ何年かでがっくりと老け込みました。足が弱り、物忘れをし、耳が遠くなり、コミュニケーションをとるのも困難になっていました。一日のほとんどを家の中で過ごし、よく具合悪いと言っては寝込むようになっていました。
 「歳をとると目は見えない、耳は聞こえない、口はまわらなくなって何にもいいことない」とよく言っていました。バスで20分くらいの距離でも祖母にとっては大変なことです。ひ孫見たさの勢いでやって来たのです。私は看護婦さんにお願いして赤ちゃんを見せてもらいました。祖母は廊下からガラス越しに赤ちゃんをまぶしそうに見て「孫の子ども・・・」とつぶやいていました。